反戦川柳作家 鶴彬の生涯

一) 喜多かつじ一二(つるあきら鶴彬)は、明治四十二年一月一日石川県河北郡高松町で、父松太郎、母寿ずの次男として生まれた。八才で父が死亡し、母が東京へ再婚したので、彼を含む四人の子供たちは、伯父(喜多喜太郎)の養子となった。

(一) 喜多かつじ一二(つるあきら鶴彬)は、明治四十二年一月一日石川県河北郡高松町で、父松太郎、母寿ずの次男として生まれた。八才で父が死亡し、母が東京へ再婚したので、彼を含む四人の子供たちは、伯父(喜多喜太郎)の養子となった。
貧乏で不幸な生活にめげず、小学校から高等科へとすすむあいだ、彼の成績は優秀でたびたび級長をつとめるほどであった。高等科終了後彼は伯父の家業を手伝うことになった。勉強好きの彼は丁度となりが古本屋であったのを利用して借りた本を熟読したものであった。
彼の短詩形文学への接近はわり合いと早く、小学校在学中から、北国新聞の子供欄に短歌や俳句を投稿し、近所で印刷屋をやっていた岡田太一に川柳のてほどきをうけた。

云う事も云わぢに女やたら泣き
別れ際鹿の子の袖に用が出来
わが廻る丘の音きく夜の底

(二) 川柳入門
彼を本格的に川柳革新の一筋道へ引きこんだ契機は、すでに革新川柳の道をすすむ福村新一郎との出合いであった。 そのような彼をひきつけたのが、福村の特異な作品であった。

真昼の空間にそびゆる煙突
ときときに光る切断面の鉄 (福村作)

福村は川柳ではなく「創造詩」と名付けた。 福村との出会いを通じて、諸先輩に会いその指導をうけつつ彼は成長した。彼自らも「新進作家の花形きどりですこし生意気になっていた」とのちに当時を回想している。

(三)「プロレタリア川柳」へ
(昭和元年~同四年まで)
人生の救いとしての生命主義の芸術が、資本主義文明下に苦悶するプロレタリア階級にとって、いかほどの救いとなりうるのか、プロレタリアの苦悩は、自然よりくるものでなく社会組織よりくるものである。
芸術運動は一応は社会主義時代にはいらなければいけないのである。而も、川柳はもっともそれに適している。(鶴彬)

仏教の封印切れば犬の骨 遂にストライキ踏みにじる兵隊である

(四) 鶴彬の出発
新しい名前「鶴彬」による最初の川柳は次のとおりである。

退けば飢えるばかりなる前へ出る
兵隊をつれて坊主が牢へ来る
軍神の像の真下の失業者
指のない手に組合旗にぎりしめ
稼ぎ手を殺し勲章でだますなり
肺を疾む乳房にプロレタリの子
血を喀いて抗あがれば首を切り
しもやけがわれて夜業の革命歌

昭和五年一月十日、鶴彬、陸軍に召集され第七連隊に入隊する。
(五) 第七連隊赤化事件(昭和五年~昭和八年)
昭和五年一月入隊の喜多一二・二等兵は六月から八月にかけて、日本共産青年同盟の機関誌紙「無産青年」数部を数回に分けて隊内に持ち込み宣伝しようとした。
昭和六年六月、第九帰国軍法会議は治安維持法違反として懲役二年の判決を行い、喜多は大阪衛戌監獄に送られた。
昭和八年出獄、川柳仲間の沖野平吉氏のもとに寄食する。

(六) 大衆性と芸能性(昭和九年~昭和十一年)
鶴彬は大衆内部のエネルギーを爆発させ、武器としての川柳の大衆性をとらえる。 女工、身売り、失業、貧農、労働者と、彼の目と心は大衆の中へくいこんで行く。



玉の井に模範女工のなれのはて
ざん壕で読む妹を売る手紙
吸いに行く―姉を殺した綿くずを
きょうのよき日の旗が立ってあぶれてしまう

(七) 検挙・病・終焉
(昭和十一年~昭和十三年)
社会主義レアリズムの提唱
日中侵略戦争が始まり、政権の圧迫は日に日に増大していった。 その中にあって彼は果敢に闘い書いた。

高粱の実りへ戦車と靴の鋲
屍のいないニュース映画で勇ましい
万才とあげて行った手を大陸において来た
手と足をもいだ丸太にしてかえし

昭和十二年十二月三日、鶴彬は特高警察により逮捕され、警視庁に連行され、その日のうちに野方署に留置された。
留置中に病に侵された彼は豊多摩病院へ監視付きのまま入院する。
昭和十三年八月二十五日付の書簡 「赤痢を得て表記へ入院しています。」
昭和十三年八月二十九日付の書簡 「発病以来、重湯とリンゴの汁で細々と命をつなぐのみです。いずれお礼は全快の上で、親しくご拝眉の上で」とある。これが彼の絶筆となった。 鶴彬は昭和十三年九月十四日午後三時四十分逝去・享年二十九才。
安倍政権が「集団的自衛権」の名の下に再び戦争への道を狂走しようとしている今、われわれは戦時の圧迫下にあって果敢に闘いつづけた鶴彬の精神に学ぶべきではないのか。
七月二日 中西 久夫
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